「平穏死」10の条件

あっと言う間に10月。「本当に月日の経つのが早いなぁ」とつぶやいていると
横に居た82歳の母が、「そうよ。こうして死期がどんどん近づいてくるんやわ」と
ひとこと。一瞬、リアクションに困るものの、何食わぬ顔で、「そうやねぇ」 と
返す私。生まれてから、時間が経過するに従い、日々、死期に近づいていくのは、
すべての生き物に共通して言えること。何も、今年12月に御年83歳になる母に
限って言えることではない。

その母が、最近、購入した本が、「平穏死」10の条件。
副題に、『自分の最期は 自分で決める!』とある。
著者は、医師の長尾和宏氏。(ブックマン社) 新聞に出ていた書評を見て、購入
したらしい。 まだ全部読み切っていないらしく、いつも机の上に置きっぱなし。
そのタイトルを目にするたびに、ちょっぴりドキッとしてしまう気弱な私….。

ある日の夜、「出来ることなら自宅で死にたいなぁ」と、独り言のように
つぶやく母。一瞬、聞こえないふりをしようかなと思ったものの、 『いやいや、
ここはしっかりコメントしておいたほうがよさそうだ』と思い直し、
「うん、まぁ、その時によりけりだよね。でも、誰でも最期は大体、病院でって
ことになるんじゃないかな。設備が整っているほうが、酸素吸入や注射も、
必要に応じてちゃんとしてもらえるし……」と答えた。すると、
「ふぅん、せやねぇ」と、母もなんとなく納得した様子。

かと思えば、それからしばらくした日の夜、「あのね、私が死んだらね、
お葬式の時は別になんでもええけど、偲ぶ会かなんか、してくれるでしょ?
その時にね、BGMで、“ミスティ”(往年のスタンダードジャズの名曲ナンバーで、
確かにいい曲で私も好きだ)を流して欲しいねん」と、のたまう母。
「はぁ?!」と困惑する私をしり目に、いきなり、“Look at me…..”の
メロディーで始まる、ミスティ(Misty)を鼻歌で唄い出す母。

20年ほど前、従妹と一緒にニューヨークに行った際、グリニッチビレッジ
のジャズバーで弾き語りをしていたおじさんにリクエストして唄ってもらった
ことを思い出し、その話をすると、「あぁ、そんなとこでお酒でも飲みながら
聞いたら最高にいいやろねぇ」 とうっとりする母。その様子を見る限り、
まだ後20年は、お迎えは来ないような 気がする。今から14年前にひと足
先に逝った父も、もうしばらくは一人でのんびりしていたいかも…….。


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