母の不安

西宮北口にある兵庫県立芸術文化センターの会員登録をしている母には、
お芝居やコンサートなどの案内DMが定期的に届けられる。
最近届いた中に、ウラディーミル・フェドセーエフ氏指揮による
チャイコフスキー・シンフォニー・オーケストラの案内が…..。
指揮者の80歳記念と記載されていた。

昨日のこと。
そのチラシを見ながら、『オーケストラの演奏を生で聴いたら、思わず
鳥肌立つような瞬間ってあるよね。長いこと、こんなん聴きに行ってへんわぁ』と
母がしみじみ言う。公演は、10月20日の土曜日。
手帳を見ると、まだ予定は空いている。

『行ったらいいやん。予約開始日は5月21日やから、今ならまだ、そこそこ
いい席が取れるんと違うかな』と言う私に、『行けるかなぁ』と不安がる母。
『車椅子で行けばいいやん』と説得し、予約の電話をかけてみた。
車椅子に座ったままでOKなら、比較的、舞台に近い場所で鑑賞できるそうだ。
付添人は補助椅子らしいが、それでも前のほうで見られるならラッキーというもの。

予約できたことを母に告げると、『もし私が行かれへんかったら、あんた、誰か
友達でも誘って行っておいでね』とおもむろに言うではないか。
『えぇ?それ、どういう意味?』と訊く私に、
『だって、その時まで生きてへんかも知れへんやん』と答える母は82歳。
『なにアホなこと言うてんのよ。そんなこと言う人に限って長生きするねんから。
コンサートに行きたいって思うことが若さの証拠やん』 と一笑に付した私だが、
内心は、高齢になり、様々な身体的障がいを抱えていると、つい 先のことを
こんな風に考えてしまうものなんだなと、ちょっぴりかわいそうに……。

10月20日の公演の日まで、後、約4ケ月半。
2012年を迎えて、もう早や5ケ月が経過。それを思うと、10月なんて、
きっと、あっと言う間にやってくるに違いない。

どうか、母も私も元気でその日を迎えられるようにと願いながら、
『10月なんて、すぐやって来るねんから。逆に、その日を楽しみにしながら、
それまで元気でいようと思えるからいいやん。それって長生きの秘訣だよ。それに、
そんなこと言うなら、御年80歳という高齢で、日本まで来て、オーケストラの指揮
なんて重労働をこなす指揮者の人はどうなるんよ』と言うと、
『ほんまやね』と一抹の不安を感じながらも嬉しそうな顔を見せてくれた。

指揮者の方も、どうかお元気で無事に来日され、私たち母娘のためにも、
ぜひ素晴らしい演奏を聴かせてほしいと願わずにはいられない。


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