『今、この瞬間が……。』

大晦日の日、紅白も終わりに近づいた頃、年越そばの準備を開始。
毎年、母が準備してくれていたが、12月初め頃から物がすべて2重に見える
という母に代わって今回は私が担当。この症状は、老化により、目の焦点を
合わせるための滑車神経という神経が麻痺することによって出るらしい。
3ヶ月程すれば治ると思う、というのが眼科医の診断。念のために、脳のCTも
撮ってもらったが今の所、脳には異常はないとのこと。念には念をということで、
今週末にはMRIも撮る予定。

いざ、年越そばの準備が出来、二人で食べようとした途端、突然、
『えーん、えーん』と子供のように泣き出した母。思わずお箸をとめて、
『どうしたん?どっか具合悪いん?』ときく私に、母が泣きながら答えた。
『今、この瞬間がたまらなく満ち足りて幸せやと思うと泣けてきてん』と。

平成20年に父が他界して以来、私にとっては毎年繰り返し続けている、
当たり前のシーンなのに……。でも、母にとっては、かけがえのない幸せな
瞬間なんだな、ということを改めて知った貴重な瞬間だった。

年明けて元旦の朝。ささやかな御節料理を前に土佐の銘酒四万十川で乾杯。
その途端にまた、『えーん、えーん』と泣き出す母。 『どうしたん?』ときく私。
『(自分で書くのはいささか気恥ずかしいが)親孝行の娘を持って幸せやと
思て』と泣きながら母が言う。『何言うてるのん。長年お世話になってんのは
私のほうやん。これからも元気で長生きしてよ』と私。

12月23日に満80歳となった母。年と共にだんだん涙もろくなってきたようだ。
老化による体調の不具合は、未経験の私には正直、理解しがたいものだが、
できるだけ快適に余生を過ごして欲しいものだと心から願っている。

何気ない、ごく当たり前の瞬間を、満ち足りて幸せだと思うことの大切さを、
老いた母から教えられた年末年始のひとときだった。


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